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【レポート】『ラ・ボエーム』音楽レクチャー(4/4開催)(<オペラを知る>シリーズ)

日生劇場<オペラを知る>シリーズ2021

日生劇場<オペラを知る>シリーズと題し、6月上演オペラ『ラ・ボエーム』(6/12,13)と『蝶々夫人』(6/25,26,27)をより楽しんでいただける企画を開催しました。
当日の様子をご紹介していきます。

【日生劇場<オペラを知る>シリーズ】
① 日生劇場×藤原歌劇団合同企画「6月オペラ プレコンサート」(3/28開催)レポート
② NISSAY OPERA 2021 『ラ・ボエーム』 音楽レクチャー(4/4開催)レポート
③ NISSAY OPERA 2021 『ラ・ボエーム』 ドラマトゥルギー・レクチャー(4/10開催)レポート

 

  NISSAY OPERA 2021 
②『ラ・ボエーム』音楽レクチャー(4/4開催) レポート

6月12日、13日上演『ラ・ボエーム』の指揮者 園田隆一郎さんが、オペラ・キュレーターの井内美香さん、2017年初演時にミミを演じた砂川涼子さん(ソプラノ)とともに、プッチーニの音楽と『ラ・ボエーム』の魅力、本公演の宮本益光氏による日本語訳詞とその演奏についてまで、実演を交えながら解説してくださいました。

 

左から 砂川涼子、園田隆一郎、井内美香

 

前半は、園田マエストロと井内さんによるトークと実演。
まず、『ラ・ボエーム』について、プッチーニ作曲の名作オペラの中でも、特に「若者たちの青春物語」を題材としている点が親しみやすく、愛されている所以だろうという井内さんに、園田マエストロも、思い出話を交えながら、本作の恋物語だけではない、ロドルフォたち4人の若者たちがはしゃいだり、生き生きと生活しているシーンや粋な台詞の応酬が魅力だと語っていました。
ロドルフォのモデルと言われ、まさに『ラ・ボエーム』の生活を送っていたという原作者のミュルジェール、若い芸術家たちで集まって語り合っていたプッチーニ、そして、現代の作り手、演奏家、歌い手、観客、皆の“青春”がつまったオペラこそ『ラ・ボエーム』なのでしょう。

 

 

プッチーニの音楽は、軽快でコミカルな音楽が主軸の恋物語を生かしている部分と、切れ目なく続くテンポの良さが特徴という園田マエストロ。おすすめの箇所を、ピアノ演奏での実演を交えながら、解説していただきました。
1幕の冒頭や、3幕のロドルフォがミミの病気を打ち明けるシーンなどには、当時先進的だった和音の連なりが取り入れられ、軽快さや心の不安定さなどが表現されていたり、それまでは切迫したシーンに使用されていたリズムの拍子を変えるシンコペーションが、ロドルフォのアリア「なんて冷たい手」など、心の揺れやときめきを表現するために多用されていたりと、プッチーニは新しい技法を積極的に取り入れて音楽に深みを持たせているようです。

 

 

また、先にでてきた音楽がリズムや強弱など形を変えて、後から何度も出てくる点にも注目してほしいといいます。アリア「私の名はミミ」の一節なども、変化しながら使われ、シーンごとの意味や登場人物たちの気持ちを代弁する役割を担っているということで、マエストロもプッチーニが思い描いていたものを表現したいと熱く語っていました。
そして、前半最後は、砂川涼子さんにご登場いただき、アリア「私の名はミミ」のイタリア語と、日本語の歌唱を聴き比べていただいて締めくくられました。

 

 

後半は、砂川さんを迎えて、日本語訳詞や2017年初演当時についてのトークと質問コーナー。
日生劇場では、中高生無料招待公演である「ニッセイ名作シリーズ」の上演やオペラの裾野を拡げるという目的から、日本語訳詞上演にも力を入れてきており、『ラ・ボエーム』2017年初演時にも日本語訳詞上演に挑戦しました。その際、宮本益光さんに新たに日本語訳詞をお願いし、演出家の伊香修吾さん、園田マエストロ、宮本さんの3名で、表現したい作品のための日本語訳詞を作り上げていったといいます。バリトン歌手の宮本さんだからこそ、音の響きや歌いやすさを大事にしながら、分かりやすく詩としても美しい表現を全編に散りばめた日本語訳詞になっています。
砂川さんは難しかった点として、声の響きと日本語としての聞き取りやすさとの両立を上げていました。母国語だからこそ、歌うだけではなく、言葉を語って届けるという点も大切にしながら、表現を模索していったといいます。

 

指揮者、演出者、訳詞家、歌い手、それぞれの表現が高まりあい、昇華して紡がれる日生劇場のオペラ『ラ・ボエーム』。
質問コーナーでは、園田マエストロが歌い手にあわせて丁寧にアドバイスするエピソードや、作品をチームワークで作り上げていく過程についての話題も出ていました。

今回、2017年初演時のプロダクションを、2021年版として、新たな視点で再構築して上演するに辺り、日本語訳詞についても新たに手を加えながら作り上げています。
フレッシュな顔ぶれの歌い手たちも迎えて、どんな青春物語『ラ・ボエーム』が紡がれるのか、ぜひご期待ください。

 

♪NISSAY OPERA 2021 『ラ・ボエーム』公演詳細はこちら

 

 

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