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【レポート】『ラ・ボエーム』ドラマトゥルギー・レクチャー(4/10開催)(<オペラを知る>シリーズ)

日生劇場<オペラを知る>シリーズ2021

日生劇場<オペラを知る>シリーズと題し、6月上演オペラ『ラ・ボエーム』(6/12,13)と『蝶々夫人』(6/25,26,27)をより楽しんでいただける企画を開催しました。
当日の様子をご紹介していきます。

【日生劇場<オペラを知る>シリーズ】
① 日生劇場×藤原歌劇団合同企画「6月オペラ プレコンサート」(3/28開催)レポート
② NISSAY OPERA 2021 『ラ・ボエーム』 音楽レクチャー(4/4開催)レポート
③ NISSAY OPERA 2021 『ラ・ボエーム』 ドラマトゥルギー・レクチャー(4/10開催)レポート

 

  NISSAY OPERA 2021 
③『ラ・ボエーム』 ドラマトゥルギー・レクチャー(4/10開催) レポート

6月12日、13日上演『ラ・ボエーム』は、2017年初演プロダクションの再演に、新たな視点から描く「再構築」という形で挑戦します。「再構築」とはどういうことなのか。演出の伊香修吾さんと、演出家で日生劇場芸術参与の粟國淳が語り合いました。

左から、粟國淳、伊香修吾

 

まず前半は、2017年初演時の映像を振り返りながら、特徴的な演出や当時のエピソードを交えて、『ラ・ボエーム』演出について語っていただきました。

2017年公演ダイジェスト映像

 

オペラ『ラ・ボエーム』は、19世紀半ばのパリで屋根裏部屋に集うボヘミアンたちの恋愛と友情を描いた青春群像劇。当時の若者たちのリアルで等身大な姿が描かれています。

最後にミミが病のために亡くなるというストーリーですが、2017年初演時は「ボヘミアンたちの回想」というコンセプトのもと、はじまりを「ミミの墓参り」に設定。音楽が始まり、左右からセットが出てきて屋根裏部屋になるという流れでした。この流れは、ダイジェスト映像でもご覧いただけます。また、各幕が始まる前に、楽譜にも書かれた原作小説「ボヘミアン生活の情景」の一節を、ボヘミアンたちが語るナレーションが入るのも特徴でした。

2幕の終わりも特徴的で、アルチンドロのシーンで終わるオペラ台本とは違い、若者たちだけが舞台に残りました。「プッチーニの音楽は、動きが音に全て書き込まれているような印象を受ける」という伊香さん。楽譜での指定が細かい中で、2017年はあえて変更し、この場面で「若者たちの一番幸せな時間」を描き出したかったといいます。
そして、4幕の最後に屋根裏部屋でミミが亡くなると、セットが分かれて、はじめの場面に戻ります。それぞれ別の方向に歩み出していった5人のボヘミアンたちが、ふとミミのお墓を振り返るところで終演しました。

 

2幕終わり 2017年公演より 撮影:三枝近志
(2021年版はどう表現されるのか、お楽しみに)

 

2017年初演時に描かれたのは、ミミの死後にそれぞれの人生を歩み出した若者たちが、ふとミミという女性がいた、儚くもかけがえのない一時を思い返す物語。まさに原作小説の「青春は斯くも儚し」。

伊香さんは、オペラ『ラ・ボエーム』が、ある限られた期間の物語だということを強調したかったといいます。同意見だという粟國は「たとえ考えていることが同じでも、それをどう表現するかで見え方が変わるのが、舞台の面白さ」そして、「演出家は、楽譜の指示通りではなくても、大事なポイントをお客様に伝えられるような演出にも挑戦しなければならないと思う」と語っていました。

 


2017年公演より 撮影:三枝近志

 

後半は、再構築版を上演するに至った経緯と、2021年版のヒントを語っていただきました。

「『ラ・ボエーム』は、3密の塊のようなオペラ。最もコロナ禍に適さないオペラの一つではないか」という伊香さん。コロナ禍の再演で、2017年初演時と同じにはできないという壁に直面し、色々なプランを練ったといいます。

日生劇場では、2020年11月の新制作オペラ「ランメルモールのルチア」では、翻案に挑戦し、一人芝居版「ルチア~あるいはある花嫁の悲劇~」(田尾下哲演出・翻案)を上演しましたが、今回は「再演」ということで、2017年のプロダクションとの関係をどう作るかということも課題に。2017年初演時と全く同じものはできないが、全く違うものにしてもいけない。また、一旦作り込んだ作品をただ修正して、劣化版にはしたくない。

 

辿り着いた答えは、「2017年時と本質は変えずに、違う角度から表現して「見せ方」を変える。音楽もカットはせず、演奏方法を工夫する」というプラン。
粟國もこれには「コロナ禍での再演は大変。一度完成した作品を別の視点で演出することは難しい挑戦ですが、劇場としてはそこを推していきたい」と期待を滲ませていました。

「2017年初演時と「表と裏」の関係になるようなイメージ」という伊香さん。
具体的な演出内容は、幕が上がってからのお楽しみですが、ヒントは「チラシ」。

そして、もう一つ再演としては例がないというものが「舞台装置」。通常は前回の舞台装置を流用するものですが、今回はなんと、ほぼ全て作り直し。伊香さんも「力が入っていますので、ぜひ観ていただきたい」と意気込んでいました。

 

2017年初演時の舞台装置

 

質問コーナーでは、サプライズゲスト 指揮者の園田隆一郎さんにご登場いただいて、リハーサルの様子や、宮本益光氏による日本語訳詞上演についても語っていただきました。日本語訳詞上演について、粟國は「オペラを観るのが初めての方にも、歌と言葉で、物語と感情がダイレクトに伝わるというオペラの本質を体験してほしい」と語っていました。(日本語訳詞上演については、音楽レクチャーレポートもご覧ください)

 

最後に、伊香さんからは「2017年初演を観た方こそ面白いかもしれませんし、2021年版を初めて観る方にも2017年版が観たくなるような「再構築版」にしたいです」、粟國からは「プランナーとデザイナーがまったく同じで、2017年を念頭におきつつ、違う視点のものを作るとどうなるかの挑戦。オペラでは今までにない試みなので、ぜひ期待していただきたい」と締めくくられました。

『ラ・ボエーム』が2021年再構築版としてどのように紡ぎ出されるのか、ぜひ日生劇場でご覧ください。

 

(稽古後に参加してくださった、園田マエストロとボヘミアンズもいっしょに記念撮影)
左から、池内響、園田隆一郎、粟國淳、伊香修吾、迫田美帆、岸浪愛学

 

 

♪NISSAY OPERA 2021 『ラ・ボエーム』公演詳細はこちら

 

 

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