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オペラ『ルチア』関連企画 「ドラマトゥルギー・レクチャー」(9/20開催)レポート

NISSAY OPERA 2020 特別編 オペラ
『ルチア~あるいはある花嫁の悲劇~』

関連企画 「ドラマトゥルギー・レクチャー」(9/20開催)レポート

コロナの時代に、オペラの制作者はどのように向き合い、舞台作りに臨むのか。オペラ界で活躍する二人の演出家 田尾下 哲さんと粟國 淳さん(日生劇場芸術参与)が語り合いました。

【目次】
「演出家」の歴史 – 1980年代からの動向
対話 – “Traditional”と向き合う

 

♪「演出家」の歴史 – 1980年代からの動向

 

演出家は「ストーリーテラー」、「どのようにその物語を伝えるかという仕事」という田尾下さん。そして、他ジャンルとオペラ演出の大きな違いは、オペラは、作曲される段階で、既に作曲家による台本の解釈が介入していることだといいます。前半では、田尾下さんから「オペラ演出」の仕事、作品や音楽へのアプローチの仕方について、舞台・オペラの歴史を紐解きながら解説いただきました。 作品と楽譜、音楽に対する深い理解をベースに、自分の考えや時代を反映して「物語を伝える」オペラ演出。そこから、今回の「ルチア」が生まれます。

 

♪対話 – “Traditional”と向き合う

 

後半では、お客様からの質問に答える形で、本作の演出内容と目指すものについて、ご説明いただきました。
原作の楽譜と、舞台となる時代にふさわしい物語を描きたいという田尾下さん。コロナ禍により、90分での上演と安全対策を前提として翻案するにあたり、ただ単にカットするだけではなく、「物語を伝える」ために、ルチアの悲劇に焦点を絞り、ルチアの一人芝居とすることに決めたといいます。3幕を1幕に凝縮していますが、ルチアの歌はほぼカットなし。歌とともに、舞台上でずっと演技し続けるということで、ルチア役への要求は高いですが、「歌い手といっしょに相談しながら作っていきたいですし、だからこそ挑戦しがいがある」と意気込みを語っていました。

また、今回ルチア以外の歌い手たちは芝居をしない点については、「芝居をしない分、より声と音楽でのドラマが要求される」という粟國さん。歌い手たちも声だけで表現することに意義を感じて、気合いが入っているとのことで、田尾下さんも、ルチアが歌っていない場面での音楽とルチアの表現に注目してほしいといいます。演出家、指揮者、歌い手が表現を重ねて紡ぎ出すのがオペラの魅力。今作でも声のドラマが重なり合い、ルチアに集まることで、ドニゼッティの音楽の力、オペラが持つ力を感じていただける公演になるのではないでしょうか。
コロナ禍の時代の新たな演出アプローチとなる今作に、粟國さんも演出家として「羨ましい、挑戦してみたい」と言いながら、「ルチアという作品だからできること、ルチアから目が離せないと思う」と期待を滲ませていました。

 

最後に、コロナ後のオペラの展望について聞かれ、田尾下さんは「コロナがあっても音楽の力、魅力は変わらないと思うので、オペラ上演には希望を持ち続けて取り組んでいきたい」、粟國さんからは「劇場として止まらずに何かを届けていかなければならない中で、新たな作品作りや知られていなかった作品を紹介するきっかけになり、より名作を知るということにも繋がると思う。今回も「ルチア」に別の角度から焦点をあてた作品なので、ぜひ観ていただきたい」と締めくくられました。
このコロナの時代に、日生劇場で新たに紡ぎ出される「ルチア」の物語にご注目ください。

 

◆オペラ『ルチア~あるいはある花嫁の悲劇~』公演ページはこちら

【オペラ『ルチア~あるいはある花嫁の悲劇~』上演に向けて】
◆演出・翻案 田 尾下哲インタビューはこちら
◆日生劇場芸術参与 粟國淳インタビューはこちら

 

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